NPOがGoogle AdGrantsで多様な人材を集める:NPO法人LightRing.の事例から

Google AdGrantsとは、GoogleがNPO向けに提供する1万ドル(約120万円)分の無償広告枠のことです。

今回は、NPO法人LightRing.の石井綾華代表理事(以下、石井さん)とともに導入したGoogle AdGrantsの直接的な実績とそのインパクトの波及効果についてご紹介します。

Light Ring.は年間6500名の30代以下の若年層自殺うつ問題の解決をミッションに、友人や恋人など支えに悩む若者に対して、ソーシャルサポート力養成講座や集える居場所を開催しています。

組織全体の平均年齢が若いため、若者の強み(新しいITツールの積極的導入、柔軟な事業運営)を活かした活動をしています。

NPO法人LightRing.の詳細はこちらから

導入および運営方法

まず今回のGoogle AdGrants導入目的は、LightRing.の活動を支える優秀なボランティアスタッフの募集でした。

ITツールの導入においては、スモールスタートが大切です。
いきなり大きく手を広げて展開すると、うまく運用できずに失敗する危険性が高く、また効果測定が難しくなります。

導入時に石井さんには、ヒトとカネどちらが優先的に欲しいですか?という問いをした時に「ヒト」です。という回答を得たたため、今回は人材募集に特化して導入しました。

以下がおおよそのタイムスケジュール(実績)です。

1か月目:導入目的の明確化、ターゲットとするペルソナの明確化
2か月目:広告文/キーワード設計、導入
3か月目:効果測定と広告文/キーワードの入れ替え
4か月目以降:私の時間がとれなくなり、ほぼ放置

だいたい放置をして、現在までで5か月そのまま運用しているという状態です。
本当はしっかり運用したほうがいいのですが、放置しても勝手に成果を出してくれるのがインターネット広告のいいところですね。

私もリスティング広告はド素人だったので、ペルソナも事実に基づいたものではなく
石井さんの肌感覚で、こんな感じというものでしたし、
広告文やキーワードも、緻密な設計ではなく、素人が頑張って作るというものでした。

しかし、これが思った以上の実績を生みます。

定量的な評価

グラフ
上のグラフは、ここ1年間の団体へのスタッフ応募人数です。正直、人数的には数名増えた程度です。

しかし、LightRing.が定義するボランティアスタッフはメイン事業の運営管理を
業務とするため、簡単にはなれないように書類選考のほか、面接が2回以上あります。

1人のボランティア選考に約2週間かかることを考えると、月1名だったのが、週に2名来るようになったことは団体運営的に相当な影響が出ます。

現在でも以前より時間がかかっていますが、しっかり選考し、良い人材が入ってきているそうです。

定性的な評価

これまでは、既存スタッフの個人的な伝手やWebサイトからしか応募がなかったのですが、Google AdGrantsを使用し、マスのチャネルからの応募が増えたことにより、以下の好影響があったと、石井さんは話します。

これまでにない多様な人材

「これまでは当事者、または当事者に近い方からの応募が多かったですが、いまは様々な動機から応募していただく方が増えました。」(石井さん)

少人数で運営するNPOでは、ニッチな社会課題をその分野に強烈な思い入れのある方々が運営しているため、どうしても同質的な人材になりがちです。

しかし、人材に多様性がないと、独りよがりの活動になり、受益者や支援者のニーズという視点で活動することがなかなか難しくなります。

Google AdGrantsを使用することにより、様々なキーワードで共感した方々が応募しているそうです。

もちろん厳しい選考を通った方のみが、活動に参加することになるのですが、組織の多様性は格段に上がったそうです。

この組織構成メンバーの多様性は、即効性はないものの、事業運営にいい影響を着実に与えるものです。

人材が多様になった理由は、おそらくキーワードを部分一致に設定していることだと考えています。

活動時間が多く取れる人材

「これまでは、ちょっとボランティアしたいです。勉強したいです。という方が多かった印象でしたが、いまは本気で活動したい、将来仕事にしたい。という方が増えた気がします」(石井さん)

現在の検索キーワードは、「事業内容(例:傾聴、支え手など)×ボランティア」や「ミッション(若者、心の病など)×ボランティア」というような設定をしています。

そのため、単にボランティア活動を探している人よりも、LightRing.のミッションや事業にリンクする経験やバックグラウンドを持った方が広告を見てくれているのではないかと考えています。

ミッションや事業内容に共感している方は、自分もその活動に参加し、一緒に目標を達成したいという方が多いので、その分活動時間も割いてくれ、コミットメントが高い人が多い傾向になっていると考察しています。

全国の関係者からの問い合わせ増加

「これまでとは違い、関係者からの問い合わせが増えました。特に関東地域以外で活動する方、例えば生活相談員の方々からの問い合わせが増えています。その地方で、若者への相談事業をやりたいという活動の拡がりを感じます。」(石井さん)

これまでは関係者とのつながりは、石井さんとの対面でのつながりが多かったそうですが、Google AdGrantsを使用することで、全国にその活動が知れ渡り、活動に共感していただける現場の方々から連絡が来るようになったそうです。

これは、本来の目的とは合致しない副次的な効果ではありますが、団体そのものの認知が向上することで、現場で同じ思いで働く方々の目にも触れるところとなり、新しい関係性を築くことができるようになったそうです。

今後の展開

「今後は、当団体のメイン事業である支え手を育成する研修事業、支え手同士で意見を交換するコミュニティー事業の集客のツールとして使用したいと考えています。マクロ的な指標からいうと、まだまだ当団体に来てくれている支え手の数は少なく、一人で悩む方が多くいます。Google AdGrantsをうまく活用して、その方たちが一人でも多く、私たちの団体を訪問していただき、事業を通してパートナーを上手に支えていただけることを願っています。」(石井さん)

今後は、研修事業およびコミュニティー事業の集客ツールにするべく、これまでの実績を再精査し、広告やキーワードを設計している途中です。

この成果が出次第、再度記事にしたいと思います。

私の考察

今回の導入サポートで感じたことが二つあります。

まずは使ってみる!

一つは、大まかな方針が決まったら、まずは使ってみる、ということ。

1万ドル無料枠というのは、かなり頑張らないと使い切れません。実際LightRing.でも毎月の消費額は全体で2000ドル程度です。

ということは、お金の心配をせずに、まずは広告を掲載してみて、実績を早く収集することで、その事実を基にしてPDCAを回すことができます。

Google AdGrantsの管理ツールでは、何も設定しなくても、かなりの情報が収集、分析できます。

私も本を一冊読んだだけで、設定をし、ある程度分析できるようになったので、みなさんもある程度の投下時間でできると思います。

まずは、最初頑張って使ってみる。試行錯誤してみることが、導入への近道だと感じます。

小さい団体こそ導入する!

もう一つは、小さい団体であればあるほどインパクトが大きいことです。

年間予算10億の団体も100万円の団体も同じ、1万ドルの無償枠が提供されます。
インターネット広告は、一旦設定が完了すると、あとは自動的に全国(技術的には全世界)に拡散されるので、手がかからない割にインパクトが大きいと感じます。

もちろん100万円の団体は、これに割くリソースが少ないと思いますが、私はプロボノで導入できたので、団体運営が傾くくらいリソースを割かないといけないものではなりません。

小さいコストで、大きなインパクトが出るという意味では、小さい団体であればあるほどレバレッジが効くのではないかと感じます。

もちろんここでいうインパクトは良いものだけではないかもしれません。誤解を招くメッセージだったり、事実ではない広告を打てば、悪影響が出るので、そこはしっかり設計する必要があります。

最初は頑張って広告と検索キーワードを考えて、あとはできるだけ早く設定して運用する、というのをお勧めします。

ちなみに私は以下の本を一冊読んで、この導入サポートを行いました。使い方が網羅的にわかり、専門用語も解説されているので、おすすめです。

LightRing.では現在、自団体のオフィス設置に向けて物件検討をしています。
寄付でのサポートのほか、もし無償で借りられる物件をご存知の方は、ぜひこちらからご連絡をお願いいたします!

LightRing.ではスタッフも募集しています。
ミッションや事業に共感していただいて、ぜひ仲間になりたいという方はこちらからご連絡をお願いいたします!

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