書評:世界を変える偉大なNPOの条件

NPO業界で働く人にとっては、読むべき一冊としてよく紹介されているこの本。
私のような一般企業で働く人にとっても、どこかのNPOへ寄付をしようと思う場合、その団体の信頼性基準を示すような内容が書いてあります。
この本では、偉大なNPOが実践する6つの原則が書かれており、それらを満たすことによってNPOは大きく成長すると書かれています。
この書評では、寄付者としての観点でこの6原則に当てはまる団体とはどのような団体なのかを記載したいと思います。
政策アドボカシーとサービスを提供する
政策アドボカシーは、社会変革のための強力な手段である。
最良のNPOは、アドボカシー活動と地域サービスを共に行なう。
アドボカシーとは提言とよく訳されます。
つまりは、その団体が問題視する社会課題、またはその解決策を政府に提言することを示しています。
そのアドボカシーと実際のサービス、ここでいうサービスは社会課題を抱えている受益者に対するサービス提供、を行っているかということです。
寄付対象としてみた時には、必ずしも政策提言をしていなければならないわけではないです。
しかし、例えば「産後うつ」を扱うNPOの場合、産後うつ発症者の症状を軽減するようなサービスを提供するだけではなく、出産後に産後うつという病気に誰でもなる可能性があり、どのように回避すればいいのか、周りに罹患した人がいればどうすればいいのか、という情報提供を社会に対して行っている必要があると思います。
社会課題を解決するだけでなく、社会課題を社会自体に認知してもらう活動をしているかどうかが信頼できる寄付先となると思います。
市場の力を利用する
企業を変えずに世界を変えることは難しい
時々、企業とNPOがコラボレーションしてイベントや講演会が開催されていることがあります。
寄付先として捉える場合、これは非常に重要で、これは企業が一緒に仕事ができるくらい強力な組織基盤であることを意味しています。
またNPO側も企業と積極的に関わり、Win-Winの関係を維持し、自団体のみでやるよりも大きなインパクトがあることをやろうとしているNPOは、寄付先として信頼できます。
NPOのWebサイトのイベント情報に企業とのコラボイベントがあるかを是非探してみてください。
熱烈な支持者を集める
外部の人をエバンジェリストに変える
より大きなコミュニティを築く
有給のスタッフ以外のボランティアや学生インターンがどれくらい熱烈にその団体を支持しているかというのが信頼感を醸成するためのポイントとなります。
私がボランティアしている団体では、社会人でも学生でもその団体の課題やミッション、解決手法などをすらすらと話せる人が沢山います。
団体自体に愛着があり、飲み会やイベントはいつも大盛り上がりです。
外部からそういうコミュニティが築けている団体は、寄付先として信頼できる団体であると言えます。
社会課題の解決に積極的で、前向きに周りを巻き込みながら活動している団体が、低質な活動をしているはずはないからです。
NPOのネットワークを育てる
大きな影響力を発揮するNPOは、「ネットワーク重視の考え方」を採用する
活動の場を大きくするためには、資源を分かち合い、他社に権限を与える
寄付をしようとする団体が、他のNPOや団体と一緒に活動しているかどうか調べてみるといいと思います。
どのNPOも掲げるビジョンは壮大で、解決しようとする社会課題も大きいです。
十数人の組織では、とても太刀打ちできるものではない場合が多いです。
だからこそ、自分たちの足らない部分を補完し合える他団体と協力して、ネットワークを作って活動するのは、本当に課題解決に向かおうとしているという真剣度の現れです。
そういう団体に寄付をすると、寄付の何倍ものインパクトを社会に与えてくれるんだと思います。
環境に適用する技術を身につける
偉大なNPOは、たえず環境の変化に適応してやり方を変える
堅苦しい官僚主義と自由奔放な創造性の均衡点を見つける
外部から熱烈な支持者を得て、企業とコラボし、他のNPOとのネットワークを作って活動していると、外部の環境変化にさらされます。
この環境の変化を好機ととらえて、信念を曲げずに、活動を柔軟に変えているかが、寄付先として信頼できる団体です。
具体的には去年の年次報告書と今年の年次報告書でどこが違うか、何が違うかを見ると分かり易いと思います。
ボランティアとして活動しているのであれば、活動の変化を知ることができると思います。
これだけ時代の流れが速い中で、去年と全く同じことをやっている団体は、環境に適用できない、適用する気がないと言ってもいいと思います。
権限を分担する
偉大なNPOの指導者は権限を委譲する
多様なリーダーシップのあり方を開花させよ
幹部チームに権限を与える
これは、一人組織になっていないかどうか、ということです。
一人のカリスマ経営者が運営している団体もありますが、長続きしませんし、今より大きなことはできません。
彼らのイベントに参加した時に、色々な人がイベントを運営し、一人が全てをやっていないことを確認するとよいでしょう。
寄付先を選ぶときに確認していただきたい内容です。
最後に
もちろん全てを満たすようなNPOはなかなかないと思います。
ただ組織として上記のような状況を目指しているかどうかが重要だと思います。
同じ額を寄付するのであれば、やはり前向きに正しい活動をしていることが重要だと思います。